何気なく書店で手に取った、伊集院静さんのエッセイ本「大人の流儀」(講談社刊)
伊集院静さんの小説は、2、3作品しか読んだことがないけど、その本の佇まいに魅かれて購入し、一気に読んでしましました。
小説家特有の価値観や生活感を醸し出している部分もありますが、ちょっと毒舌のエッセイは、人としての在り様をズバッと書いていて、読み手の私は爽快感も味わえました。
でも、心に強く残ったのは、前妻の夏目雅子さんとの事を綴った「妻と死別した日のこと」の章に書かれていた「人はそれぞれ事情をかかえ、平然と生きている」の一節。
これから読もうと思っている方もいらっしゃるだろうから、あまり詳しくは書きませんが、この章は強く強く心に訴えかけてきました。
そう。
人って、誰もがそれぞれ事情をかかえて生きているのだと思います。
他人には言えぬ、話せぬ事情をかかえ、その事情は本人以外には到底想像つかない苦しみだったり悩みだったりするのです。
いつも笑っているあの人も、道ですれ違ったこの人も、穏やかに見える人たちも、その時々の悩みや苦しみを心の中にグッと押し込み、平然と生きているのだと思います。
私も、その一人…かな…。いや、このブログを読んでいる、あなたもその一人…ですね。
そんな事情をかかえた人間たちが交錯するこの世のなか。そう思ったら、今までよりも、ちょっと優しい気持ちになれる感じがしませんか?
この本の最後は、「愛する人との別れ 妻・夏目雅子と暮らした日々』の章でしめられています。
出逢いから発病、看病、別れ、その後の日々、すべてが赤裸々に綴られていて胸がしめつけられるようです。
そして最後の最後は、数年前に観たという映画の中の、こんな老婆の言葉でしめくくれらています。
『あなたはまだ若いから知らないでしょうが、哀しみにも終わりがあるのよ』
読み終え、本を閉じた時には、胸がいっぱいになりました。
今まで、何となく心で感じてきた感覚を、言葉で表現された、そんな感じ。
深くて、哀しみを帯びていて、それでも明日への希望がある言葉。
感じ方は人それぞれだと思いますが、私の心にはしみいった言葉でした。
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